姉のこと

姉から封書が届いた。

開けてみると、「献体に登録することにした」という手紙と、献体の同意書が入っていた。

家族の記入欄に記入して、返送して欲しいとのことだった。

さっそく記入した。

「医学のために役立ててもらえるなら。」

そう思った。

最後に印鑑を押して完了・・・のはずだった。

なぜか印鑑を押すことに動けなかった。

 

そのまま、2日間放置してしまった。

2日目の夜、姉のことを考え、胸がざわざわした。

姉が死ぬということを考えたくない。

そんな感情が湧き上がっていた。

私はこの書面から、姉の死を連想してしまったのだ。

大切な人の体を、どこかに持って行かれる不安。

それが印鑑を押すことを躊躇させていた。

 

人間、いつかは天に還る。

死後の魂は光に還る。

体はただの物質。

それを頭では理解しても、どうしても気が乗らなかった。

献体のことが気になって、ネットで色々調べた。

医学生のブログを見たりもした。

たくさん調べて、落ち着いた。そして納得した。

印鑑を押して、姉に返送した。

 

そして気づいた。

私にとって姉はとても大切な存在で、

いなくなるなんてイヤすぎる。

ずっと元気で生きていて欲しい。

そう思ってたんだと。

色々事情があって実家を出て沖縄に来たけど、私はやっぱり姉のことが大好きだったんだって気づいた。

返送したあと、姉から電話がかかってきた。

少ない会話だったけど、話せて嬉しかった。

姉は姉なりに、魂の声に従い、自分の信仰、真理に生きている。

姉が私の姉で良かった。

ありがとう。